樒「恐れ多くも、蘇乃帋樒。御奉り候………」 樒はそう言うと、それを上質の絹で出来た袱紗(ふくさ)に包み、静かに両手で抱きかかえた。 太陽はようやく山の頂上からその姿を見せ、木々の隙間に差し込んでいく。 棗「樒様ーー」 その時遠くから声がした。よく見れば向こうから、息を切って巫女装束の少女が碧い髪を揺らして近づいてくる。 棗「樒様! お待ちしておりました!」 樒「棗、来てはならぬと言いつけたのに」 棗「だって、私、樒様がご活躍遊ばれると知って、居ても立ってもいられませんでしたから。すみません、迷惑でございましょうか?」 おどおどとする少女を前に、樒はゆっくりと笑ってみせる。 棗「すみません、ごめんなさい。ごめんなさい」 少女は自分勝手に何度も何度も謝ってみせる。 樒「いいのですよ。棗。こんな遠くまで、わざわざのお迎えありがとう」 棗「っ、はいっ!」 棗と呼ばれた少女は、にっこりと笑うと、樒の手にしているあやかしを封印した器をくるめた袱紗に興味を示す。 棗「なんですか? それは?」 樒「あやかしです。棗、我ら破魔邪乃巫女はあまりに恐れ多き御霊を抱くのです」 棗「はい………??」 樒「さぁ行きましょう」 樒はそうつぶやくと帰路についた。 さっきまで弱々しい光しか放てなかった太陽は、ようやくあやかしたちを焦がす唯一無二の力をみせつつあった。 + 前へ + + もどる + + 次へ + |