オレは目を覚ます。 そして、辺りを探った。 樒は、樒はいるのだろうかと。 ………いた。 樒は、小屋のすり切れた木枠の格子から、月を眺めていた。 切り裂かれた巫女装束を、それでも前で合わせて、月をじっと見つめていた。 もののふ「樒……」 オレは声を漏らす。 樒「よく眠っていましたね。おまえほどの荒くれたあやかしも、あんなに穏やかに眠るのですね」 樒は静かにそう言った。 無感情というわけではないが、何かバカにされた気分になった。 もののふ「寝首をかくつもりならば、そうすれば良かったではないか。逆に、返り討ちにしてくれるがな」 口が勝手に動く。 そんなことを言うつもりはなかった。 樒「もう、おまえは私など比類なきほど、力を手に入れています」 樒「私は好んで虜となったもの。私がここにいるかぎり、おまえが私以外のものに手を出さないための重しとして」 もののふ「悲劇の人質といったところか」 + 前へ + + もどる + + 次へ + |