03 棗の実力


棗「覚悟!」
勢い一声をあげる少女。……蘇乃帋、棗とかいったな。
棗が目の前で、技も見えぬほどに九字を切り、そして声を発する。
棗「破魔邪乃矢!」
とたん、図太い光の矢が放たれオレに向かってくる。
もののふ「ふん、こざかしい!」
他のあやかしに効いても、オレには全く手傷など心配ない威力だ。そう思ったオレは、その矢を触手ではねのける。
………が、払いのけようとした瞬間に矢が蜘蛛の子を散らすように分裂し、包み込むようにオレに突き立つ。
もののふ「ぐううっ……」
ハリネズミのように矢を突き立てられたオレに、ずしんとした痛みが響いてくる。
棗「我が名は、倭国を統べるミカド様より、この倭国でも神聖な五国を統べる破魔邪乃巫女。蘇乃帋棗」
少女はきっと表情をひきしめると、名乗りを上げる。
棗「望様のもとに唐土(とうど)もんじょのすそ野へと誘おう!」
ぶんと手をあげると、白色の光の帯が地面から天に突きあがり、紫雲を切り裂く。
冴え冴えとした月が雲の切れ間からあらわれ、巫女達を照らす。
もののふ「ふざけろ。誰が、おまえ達に……おめおめと……」
オレは低くそう叫ぶと、矢を気合いで引き抜いて、ずしりと地面を踏みしめる。



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